美術の講師になって9年。たくさんの教え子を送り出してきましたが、中に、卒業後も気になる教え子がいました。絵を描くことがどうしようもなく好きだけど、家庭の事情でまったく違う専門性を身につける進路を選んだ子です。卒業後も何度か美術室に来てくれましたが、どこか表情は冴えず、やっぱり絵を勉強したいということを話していました。
最近、またふとその子のことを思い出し、何気なく名前を検索したところ、1件、会社で働いている様子がヒットしました。食い入るようにその会社のサイトを読みましたが、どうやら、その子の好きなことができそうな会社です。アップされている写真の表情も明るく、それを見ていたら、よかったね、と。何度もよかったねよかったね、と心の中で思っていたら、PCの前で泣いていました。